タルティーン司令部戦略課室長日誌

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2013年01月20日の記事

ビブリア古書堂の事件手帖

 

ビブリア古書堂の事件手帖
http://www.fujitv.co.jp/biblia/index.html

 

週間遅れでようやく録画していた初回を観ました、テレビドラマ『ビブリア古書堂の事件手帖』です。
原作は三上延の同名ライトノベルですが私は未読。さらに言うと、扱われていた題材である夏目漱石『それから』も恥ずかしながら未読です。

 

という訳でドラマの感想。

 

これ、面白いですね。極めて異色なミステリです。何が異色かって、大抵ミステリには殺人事件だとか何がしかの悲劇がテーマとして扱われるものですが、本作にはそれが無い。無いだけではなく、観終わったときに何とも言えない幸福感に包まれたような感じかしました。

 

幸福感
それは観ている者だけではなく、登場人物も含めてです。
ぶっちゃけ、前述の通り仰々しい派手な刑事事件が起きる訳ではなく、ごくごく身近にありそうな個人的な裏話。しかしその周囲の人はその真実を知らない。
こうした個人的な裏話は、普通は知れば藪から蛇を出すようなもので、むしろ事件を起こしてしまうようなものなのですが、本作はそういう質のものではない。それを知ったことで目の前がフッと明るくなるような、そういう類のものだったりします。

 

ミステリの手法としては、いわゆる安楽椅子探偵のタイプ。つまり推理を行う人物は、事件現場そのものを知らないし、特に今回のケースの場合、その事件すら過去のものであって接触しようもありません。
語り部である大輔の持ち込んだ古本、その1冊から大輔の祖母にまつわる過去を読み解いていく。当然、いわゆる探偵役に相当するビブリア古書堂の店主こと栞子には大輔の祖母との接点はなく、大輔の家に訪れることもない。空間としては自らの古書店だけ。その場所から動くことなく全てを読み解いていくその姿はまさに典型的な安楽椅子探偵のスタイルです。

 

 

本作の良いところは、前述のように人の心を幸福にするだけではなく、実在の著書を題材としている点にあります。
このとき、本作に接するときにはつの人間が存在することになります。即ち、題材とする著書を既に知っている場合と、知らない場合です。
前者であれば著書の内容を知っていることになり、ミステリにあたってのカギとなる情報をより多く知ることになります。従って、より謎解きに関わっていける要素が増えます。

 

では後者の場合はどうか。著書の内容を知らないということは情報がそれだけ少ないことを意味します。ということはアンフェアと成り得ないか?
そうはならないところが素晴らしい。むしろ、くだんの著書への関心をいざなってくれる。つまり、本の紹介という側面ももつ作品であるということができます。

 

言い換えれば、これはメタフィクションの手法を使った、観ている者の参加型作品と呼ぶこともできそうです。
登場する著書は実在し、本作とは別に読むことがリアルとして実際にできる。謎解きをするにあたって、その原典たる著書にあたることもでき、或いは読まぬ知らぬというままに解決シーンに到り、帰納的に原典を辿るという楽しみ方もできます。

 

「実在の著書を題材として扱ったミステリと言えば、
 昨年に公開された映画『推理作家ポー 最期の5日間』も
 似たような手法だよね

 

まぁ、ある意味ではそういう部分もありますね。
『推理作家ポー 最期の日間』は私も観てきましたが…、

 

【過去ブログ】

推理作家ポー 最期の5日間
http://blog.hangame.co.jp/agc_tailltea/article/39777160/

 

…しかしブログでも書きましたが『推理作家ポー 最期の5日間』は観る人をひどく選ぶ内容となっており、正直後味が宜しくありませんでした
私自身が残虐描写を苦手に感じているということもありますが、『推理作家ポー 最期の5日間』を観て心が晴れ晴れとする人は、たぶんいないと思うのです。そして登場人物も誰人として幸せにはなっていません。
ポーの著作に興味を覚えることはあっても、劇中でくだんの著書について解説する場面はほとんど無く、よって当該著書を知らない観客は置いてけぼりをくらうのが『推理作家ポー 最期の5日間』なのです。

 

ついてに言うと、多少ネタバレにはなりますが映画『推理作家ポー 最期の5日間』の場合、登場する著書に関する詳しい知識があったとしても、謎解きの上では正直アンフェアな展開も多いので、納得できない方も少なくないのでは…という気がします。
もっとも、それはくだんの作品の演出であることを私は理解していますので、これを以って評価を下げるものではないと考えていますが…。

 

しかし、これに対して『ビブリア古書堂の事件手帖』は題材となる著書を知らないことは、謎解きの上では遅れをとるかもしれないものの、物語を楽しむ上では何らデメリットにはなりません。むしろ真実が明らかにされたとき、より強い衝撃を以って臨むことができるぶん、別の楽しみが増えるとも言えます。
また、当該著書に関する解説もあるので、知識を深める機会にもなります。
これもまた、幸福感というか、満足感を向上させる要素になっていると思います。

 

 

私自身がミステリ好きだというのもありますが、このドラマは最後まで観てみたいと思いました。

 

 

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