タルティーン司令部戦略課室長日誌

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2013年02月06日の記事

シェフ!

お題ブログ:最近、思わず笑顔になった出来事を教えて!

 

『シェフ! 〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜』を観てきました。

 

シェフ! 〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜
http://chef.gaga.ne.jp/

 

これはもっと評価されるべき映画だよ!

 

近所の映画館では今月初旬に公開して間もなく終了してしまうようですが、勿体無い気がしました。
内容は料理をテーマとしたフレンチ・コメディゆったりとした展開ながらもテンポの良い笑いが繰り広げられます。
このコメディとテンポのセンスが合うならば気に入る“一品”になると思う映画です。

 

料理の食材が次々と登場します。
私も決してこの手の名詞に通じている訳ではなく、ほとんど意味が判りませんでした。ですが、料理のことなんてまったくのオンチでも構いません。知らなくても面白い。そういう作りになっています。
ただ、パンフレットには劇中に登場するケーキのレシピもあり、恐らくは料理が判る方であれば、なお楽しめる内容なのだろうとは思います。

 

 

映画の尺は85分。
個人的には、もう少し長くして複線をしっかり描けていれば、もっと面白くなったような気がするのですが、ひょっとしたらこれがフランス的なセンスなのかな…という感じで解釈しました。

 

「伏線が回収できていないの?

 

そういう訳ではないのですけれどもね…。

 

ネタバレになりますが、登場人物の設定がいまひとつ活かしきれていない感があるのです。
寄せ集めのシェフ軍団”である老人ホームの調理師人組。彼らは元トラック運転手元タイル職人元メーキャップ師なのですが…、

 

 

…この人の伏線回収がいまいちな印象を受けるのです。
元メーキャップ師チャンは、主人公であるアレクサンドルジャッキーの変装に一役買って出ます。この変装があまりにもインパクトがある為、チャンの設定が活かされているのは判ります。

 

しかし元トラック運転手ムッサ元タイル職人ティティの伏線はそれほどの印象を残さないために淡白に感じてしまうのです

 

ちなみにムッサは食材の運搬役、ティティはタイル職人時代の仕事とユーザとの接し方を回顧する場面でそれぞれ設定が活かされてはいるのです。
でも、この複線回収は正直、判りづらいですよね。

 

 

さて、本作で扱われるテーマは料理ですが、しかしその中でも幾つかのサブテーマがあります。
そのひとつがいわゆる(古典的な)料理と、分子料理と呼ばれるものの対比です。これらを肯定する向きも否定する向きもある昨今ですが、本作を読み解くとなかなか興味深い取り上げ方をしていることがわかります。
アレクサンドル分子料理を否定しています。ジャッキーも肯定しているという程ではない。たぷん彼らの視点は、しばしば現実でも話題とされる分子料理をトンデモなものとして感じている者の代表として位置付けられているのでしょう。
では本作は分子料理を否定した、アンチ分子ガストロノミープロパガンダなのか。否、そうではなく、最終的にジャッキーは古典料理と分子料理の融合を演出します。

 

 

このとき、アレクサンドルは新しい料理を生み出せなくなっており、ジャッキーも既存の料理の模倣しかできない人間であったわけで、そんな不器用な自らの殻を割って次の世界を開拓したというところに象徴的な意味が込められています。
つまり古典的だの分子料理がトンデモだのという思考自体が固定的な概念であって、それらには良きもあるし悪きもある。それらをうまく“料理”することで新しいものを築き上げていくことができるという示唆です

 

そしてもうひとつは、料理とは星の数の取り合いという無機質なものではなく、食べてもらう人を喜ばせるためのものだということ。
アレクサンドルジャッキーも、このことを忘れていたのです。大学論文に追われる娘のアマンディーヌのために、レストランの評価よりも優先してケーキを作ることでそれを思い出したアレクサンドル。妻となるベアトリスと不仲になり調理場でもギクシャクしたその状況の先に漸く料理の何たるかを感じ取ることができたジャッキー
料理人にはしばしば「こだわり」というものがあります。勿論これは、よりうまいものを作ろうという思いとプライドの上で生じるものですが、ともすればこれは客を置いてけぼりにし、客を無視したものにもなりかねない。そんな不器用さからは本当に心のこもった料理は生み出せない。そんなことを物語っているような気がしました。

 

 

というわけで…、

 

お題ブログ:最近、思わず笑顔になった出来事を教えて!

 

…随所に見られる確信犯的な“ジャポネ”ネタも含めて大いに笑える、そして落ち付けた気分にさせてくれる。
本当にもっと多くの人に観てもらえたらいい、そんな映画でした。

 

 

 

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