タルティーン司令部戦略課室長日誌

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2014年04月10日の記事

チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像

日、『チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像』を観てきました。

 

チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像
http://batista-movie.jp/

 

漫画みたいになってしまった…。

 

本作は海堂尊氏の医療ミステリを原作にもつ作品です。
タイトルで「チーム・バチスタFINAL」とうたわれているように、『チーム・バチスタの栄光』シリーズの最終作に位置付けられたものになります。
ただし劇場版映画『チーム・バチスタの栄光』シリーズではなく、テレビドラマ版のキャストになります。

 

私は『チーム・バチスタの栄光』を医療ミステリの傑作だと思っています。
医療事件をテーマとした小説としても逸品でありながら、ミステリとしても秀逸であり、医師ならではの考証に基づく描写と、緻密な伏線に加えての意外な結末。これがくだんの作品を絶賛に到らしめています。

 

『ケルベロスの肖像』はまったく知りませんので、今回の映画で初めてその内容に触れるものとなりました。
ですので原作の描写がどうであるのかは知らないのですが、少なくともこの映画に関して言えばミステリとしては難ありな構成であり、さらに医療を扱った作品としても架空要素が多すぎて『チーム・バチスタの栄光』にあったような高いリアリティは感じられないものでした。

 

 

『ケルベロスの肖像』のテーマとなるものは医療事故とその隠蔽。そして日本に於ける検死死亡時画像病理診断の社会的および医療的現状です。
これらのテーマに関しては、しっかり描けています。
ですが、本作は飽く迄も医療ミステリであり、上記のようなメッセージ性は重要ではあっても本分ではありません。

 

物語は地下の密室で人が変死をとげることから始まります。
入口はエレベータしかなく、外部からブレーカーが落とされ、彼らは閉じ込められた状態でした。しかし死因を調べても身体には異常が見当たらず、薬物反応も出ません。
奇しくも最新型のMRIを導入した、稼働を間もなく迎えるAiセンターで早速、画像診断を行うも、やはり何の出てこない。
時を前後して、くだんのAiセンターには脅迫状が届き、稼働の進退を問われることになる…というものがおおよそのあらすじになります。

 

なお、Aiセンターとは先述の死亡時画像病理診断を行う施設のことで、本作の舞台となる場所です。
リヴァイアサンと呼ばれる、世界に台しかないという最新鋭のMRIを導入し、看板たるものとして運用開始を待っています。

 

 

以下、ネタバレになります。

 

 

私もミステリファンではありますが、とにかく構成に荒が多いです。
まず最初に密室での変死事件。地下の部屋にエレベータでしか行けないという構造が、果たして建造物として有り得るのかということが一点。

 

「それを言ったら身も蓋もないんじゃないの?

 

確かにそれはありますが、例えばその部屋で火災が発生したら、どうやって避難するのです?
まして、くだんの部屋にはバーカウンターまであるのですから火気のある空間と言えます。消防法的にどうなのだろうと思わざるを得ません。

 

ちなみに密室ではありますが、本作は通常の密室殺人とは異なります。明らかに外部からブレーカーが落とされているわけであり、普通に考えて犯人は外部に逃げていることが判ります。密室ミステリとしての意味はまったくありません。
ですが、その一方で密室であることによって彼らを閉じ込めているというわけであり、殺人部屋としての意味を与えています。
もしこの部屋にエレベータだけでなく階段等もあり、かつ、その階段も使えないようなかたちで閉鎖空間を構築していたならば、先述の件に関しては問題としなかったでしょう。

 

 

しかしミステリとして問題があるのはくだんの部屋だけではありません。
ほとんどの情報が、「じつはこうだった」的に後出しで出される構成であり、観客にとってはアンフェアなものとなっています。
ミスリードを図るための演出ではなく、そもそも伏線もなく後から情報が出されるというケースもあるため、ミステリとしては正統とは言い難い気がします。

 

この「じつはこうだった」的な展開は、本作のテーマとなる医療事故等にも現れます。
登場する薬品やそのメーカは当然、架空のものなのですが、そうなると観客が推理をするためには事前にそうした名称や関係構図が示されていなければなりません。
ところが本作には後になってこれらの名前が登場するため、前提となるものもわからないままに話が進められてしまっています。
結果、ミステリとしてだけでなく、医療問題のリアリティという側面でも弱いものになっています

 

 

極め付けは終盤のクラッキングです。
現実のクラッキングの様子を再現しても演出としてわかりづらいという実情は理解できますが、こんな挙動を見せるコンピュータウィルスは一般論的に有り得ませんし、本気でシステムダウンを狙う犯人であればもっとシンプルかつまともなクラッキングを行います。
緊迫感を出すという意味もわかりますが、リアリティが著しく失われており、最早漫画にしか見えませんでした

 

医療に掛かるシーンも少なく、申し訳程度であり、「これ本当に医療映画か?」と疑いたくなりました。
手術に関する監修は皆無であっても成立するであろう構成は、本作に対する期待とは大きく離れたものとも思われ、とても残念でした。

 

 

医療事故やその隠蔽問題といったメッセージ性はよくわかります。
また、Aiの重要性や日本のMRI普及率に掛かる期待といった部分も、流石は医療に携わる人物が書いているだけはあると思わされます。

 

ですが、医療ミステリとしての本分があまりにも酷い描き方をしているため、ともすればそれらのメッセージが取って付けたようにも感じられてしまい、ひじょうに残念な気がしました。

 

 

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